電車通学で
高校時代、電車通学をしていた私は、その日も友人と一緒に楽しくおしゃべりをしながら、高校の最寄りの駅から電車に乗り込んだ。混んではいないが、そこそこ座席は埋まっていて、私たちは自然と、ドアの前に立つ形になった。
反対側には、小学生くらいの男の子が二人、私たちと同じように楽しくおしゃべりをしていた。私服で、有名な塾のリュックを背負っていたので、これから塾なのだろう。「大変そうだね」「学校の宿題だけで一杯一杯だったよね」と、友人と話ししているうち、電車は、居住地方面に走り出した。
高校の最寄り駅から居住地の最寄り駅までは、3駅で、その日の出来事を面白おかしく振り返っているうちに、居住地の最寄り駅に到着した。車掌のアナウンスが聞こえ、電車が停まり、ドアが開いた。その時である。
戸袋に手が吸い込まれる
男の子の叫び声がし、向かいを見ると、なんと、男の子の手が、ドアポケットに吸い込まれていたのだ。男の子は、自分の手を、反対の手で、必死に掴んでいたが、痛いのだろう、驚きもあったのだろう、泣き喚きながらパニックになっていた。
当然、男の子の友達も、吸い込まれている手を引っ張りながら、パニックになっていた。午後の穏やかだった車内にいた人々の行動は早かった。ドアポケットを広げようとする人、男の子に大丈夫だよと声をかける人、駅員に知らせに行く人・・・、まるで初めから役割が決まっていたかのようにスムーズで、それなのに私と友人は、ただ呆然と突っ立っていただけ。体が全然動かなかった。
男の子の腕は、駆けつけた駅員や、周りの人たちにより、無事にドアポケットから救出された。まだ泣きじゃくる男の子の背中をさすりながら、優しい声をかける人たち。さりげなく、「ドアポケットに注意」の張り紙を示して、気をつけるように促す人たち。
決して怒るでもなく、あくまでも気遣うように。そして男の子は、駅員に連れられて、おそらく駅長室に行ったようだった。あとに残った人々に安堵が広がった。「よかったね」という友人の声がして、頷こうとした私の目の前が、急に真っ暗になった。立っていられない。
なんということ、目の前で泣き喚く男の子の腕を見て、色々想像してしまい、貧血を起こしてしまったのだ。思えば昔からそうだった。血液検査が大の苦手で、人の怪我の話をまともに聞けない。想像力豊かと言われた私の脳は、イメージをリアルに描き出してしまい、血の気が引いてしまうである。(・・・今日の私は、何もできない。友人とよかったねと言い合うこともできない) 友人がベンチに誘導してくれ、座り込んだ私に、駅員が優しく声をかけてくれた。「大丈夫ですか?今日はありがとうございました」と。
もし、次に、同じようなことが起こったら、今度こそ、的確に動けるようにしたい・・・。まだふらつく頭で、私は、この駅が最寄り駅で良かった、と思った。
元大手私鉄駅員のうp主より
最近某JRで車内放送で「ドアから手を放してお待ちください」としつこいくらい放送されていましたが誰かがクレーム?入れてあまり言わなくなった?ような気もしますがドアが開く直前に手などかけていると思わぬタイミングで手が吸い込まれるという事故があります。なので各社ドアに注意喚起のステッカーが貼ってあるのです。戸袋やドアのの部分には保護?のゴムもついています。
新幹線や特急列車ですと「小さなお子様をお連れのお客様は手をつないでお降りください」というアナウンスもよく耳にします。特に鉄道車両の乗降用ドアはエレベーターや市中の自動ドアとは構造が基本的に違います。間違っても走行中にドア開いたりとかはずれたりとかシャレにもならないので相当頑丈に作られています。閉まりかけのドアに手をかけても開くことはありません。(それでも開くのは乗務員が操作して開閉しているのです)なので列車への駆け込みはくれぐれもおやめいただくようお願いします。
なお上記の記事はあくまでも個人の感想であり特定の事業者などを批判したり逆に宣伝したりするものではありません。またこの記事と状況が変わっている可能性もありますので最新の情報はお手数ですがお客さまご自身でご確認をお願いします。
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