複雑な運行経路?
数年前のある日の午後に片道およそ30分弱の距離をバスで移動した日の出来事です。目的地までの経路は全て都市部で人や車の多い通りが張り巡らされており複雑な交通規制がかけられている地域でした、私は事前の念入りな路線確認とおおよその運行時間や運賃を調べた上で目的の路線番号のバスに乗りました。
車内後部の座席に座ってから20分ほどたったこ頃でしょうか、とある交差点をバスが直進したあたりで見た目で40代前半と思しき男性の運転手さんが「ああっ!」と声をあげたのです、マイクはオフになっていましたが車内のどこにいても聞こえるほどの大きな声だったので乗客は皆一様に驚きました、私はてっきり事故でも起こしたのかと思っていたら運転手さんは車を停めて後ろを振り返ってマイクで乗客に「すみません、道を間違えました」と詫びたのです。
季節は新年度で交差点を左折する新しい運行経路に変更されたばかりだそうで、何度もトレーニングはしていたもののついうっかり交差点を直進する古い運行経路をたどってしまったと言うのです。
周囲の協力で本来の経路に戻す
経路を間違ったのであれば修正しなくてはなりません、とはいえどんなに車の少ない交差点でも誘導に慣れた人がいない状況でバックで後戻りして左折し直すなどとは危険過ぎてとてもできません。見るからにどうしようかと慌てた様子の運転手さんに乗客の15人が運転席へと歩み寄り「運転手さん、もう少し先に葬祭場があるでしょ、そこの駐車場でターンすれば大丈夫だよ」とアドバイスしてくれたのでした。運転手さんはいつも通っていた道沿いにある葬祭場だとすぐに気付いたのでしょう、「そうですね、お願いしてみます」と乗客からのその案に乗りました。
少し走ってバスは葬祭場の手前で停車し、運転手さんはバスを降りて葬祭場へ入って行くとそこの職員さんと共に表に出てきました。すぐに了解を貰えたようで駐車場内で職員さんの誘導でターンし、先ほど方向を間違えた交差点まで戻り新しい運行経路を走りました。
文字で書くと長いのですがこの間の時間のロスは10分もかかっていません。降車ベルを鳴らして降りて行く乗客に「大変ご迷惑をお掛けしました」と毎回恥ずかしそうに詫びる運転手さんに「頑張ってくださいね」と声を掛けてくれる女性客もいました、比較的年齢層の高めな15人ほどの乗客の中で誰も怒る人は1人もいませんでした。それどころか珍しいこともあるものだねと乗客同士会話や笑いが起きてなんだか楽しかったです。
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